Ⅱ、最新脳科学が解明!アゴと「脳機能」の驚くべき関係
  ①歯科と医科を結びつける先駆けとなる「咬合医学」

 
アゴと全身の関わりの深さを、さらに細かく論証していくことにしましよう。
まず、私たちの人間らしさや能力の源泉とも言える「脳」との関わりからです。
咬み合わせが脳の機能に及ぼす影響は、脳神経科学からのアプローチでも明らかになっています。

約十数年前には、その道の第一人者である澤ロ俊之理学博士(元北海道大学大学院医学研究科脳科学専攻神経機能学講座教授)にご協力ただき、共同研究を行いました。
澤口先生は、現在も私の師匠である丸山剛郎先生(大阪大学名誉教授)の共同研究者として、市民講座で咬み合わせの講演をしたり、シンポジウムのパネラーを務めてくださったりしています。

やや横道にそれますが、ここで、私が20数年前から研究してきた「咬合医学」の意義を、簡単に説明しておきたいと思います。

歯科医師の役割は、患者さんの口の状態を機能的、審美的に良好に保つことにあります。
具体的には、歯や歯肉の治療と健康維持、そして正しく咀嚼できる咬み合わせの調整を専門としています。
それは何のためかと言えば、全身の健康を保ち、快適な生活を送ってもらうためです。
少し考えればわかるとおり、口やアゴも「全身の一部」なのです。

しかし、これまでの歯科医師は、 一般に口とアゴだけに目を向け、全身との関係にはあまり関心を払ってきませんでした。

そのエアポケットを埋めるべく、アゴの位置と全身の姿勢との関係に着目することからスタートしたのが、咬合医学です。
最近は、研究が進んで、認知症や糖尿病などを進行・悪化させる要因として、歯周病が注目されたりしています。

そのように、歯科疾患と全身のさまざまな病気との関係がわかってきたこともあって、生活習慣病の予防のためにも歯の治療が大切だということを、多くの人が意識するようになってきました。
また、介護の現場などでも、歯科医師が医師と連携するケースも増えています。

しかし、「アゴと全身の関係」について、まだまだ世の中で広く認識されているとは言えません。
口を診る歯科と全身を診る医科を、本当の意味で補完するのは咬合医学です。

その意味で、丸山先生が30年前に提唱した咬合医学には、歯科と医科を結びつける動きの先駆け的な役割があると考えています。

 

参考文献:「咬合革命」、「知られざるアゴの秘密」丸山剛郎先生著
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青木歯科医院