「丸山咬合医療シリーズ」
Ⅰ、身体の不調はすべてアゴズレが原因
⑤顎偏位───アゴの位置に影響を及ぼしている地球の自転
アゴは本来、頭や顔に対してではなく、全身を見たとき中心軸に位置していなければなりません。
しかし、そういう正しい位置にアゴがある人は、めったにいません。
私の師匠である、大阪大学の名誉教授である丸山剛郎先生は、これまで18,000人以上のかみ合わせ診療を行ってきましたが、ほとんどの患者さんは下アゴがズレていたといいます。
下アゴの位置がどちらかにズレている状態を「顎偏位」(がくへんい)と呼びます。
丸山先生は著書の中で、「長年の研究を通じて、この顎偏位に一定の傾向を発見した」と記しています。
きっかけはパキスタンに旅行に出かけたとき、ペシャワール博物館で拝観した仏像の御顔にありました。
居並ぶ仏像様たちは、どなたも右側にアゴがズレていたといいます。
そのことに気づき、何かわけがあるに違いないと思い、その後行く先々で顎偏位のサンプル収集を始めたのです。
多くの人たちの顔写真を集めてチャックしたほか、日本でも各地で仏像を観察、ルーブル美術館に収蔵されている古代彫刻のアゴも確かめに行かれました。
そうしてアゴズレの観察を続け、確信したのは「アゴは右にズレやすい」傾向があるということです。
そこで今度は、右にズレやすい理由について興味を惹かれます。
生活環境や生活習慣からも、歯科学的知識からも説明がつかなかったため、「何かもっと大きな作用が働いているのではないか」と考えられました。
地球上で大きな作用といえば、引力や重力といったレベルの話です。
そこで思い当たったのが、地球の自転の影響です。ならば、北半球と南半球では顎偏位も反対になるはずだ!そう考えられたのです。
ご存知の方もいると思いますが、地球の自転の影響で私たちの住む北半球では、風が吹く方向に対して右に曲がる力を受けるため、風は中心に向かって右向きの流れとなり、反時計回り(左回り)に渦を巻くことになります。
しかし、南半球では時計回り(右回り)の渦が生じます。これは、地球の自転によって「コリオリの力」が働きます。
もし、アゴズレにも北半球と南半球で反対の傾向が見られれば、地球の自転が顎偏位に影響を及ぼしている仮設が成り立ちます。
その仮説を立証するため、2010(平成22)年に私が会長を務める日本咬合学会の会員2名がオーストラリアのメルボルンに出かけ調査を行いました。
調査の結果、北半球と南半球の顎偏位傾向は、前後のアゴズレの割合は同じだったのに対して、左右のズレは北半球と南半球では下図のように、全く逆の傾向を示していたのです。
顎偏位には、地球の自転が影響していると考えられると考えられるのです。
参考文献:「咬合革命」、「知られざるアゴの秘密」丸山剛郎先生著
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